「釜台の森」

横浜市保土ヶ谷区釜台町の台地の舳先に「釜台の森」はあります。

「釜台の森」はサクラ、ツバキ、モミジ、ヒノキ、クスノキ、キンモクセイ、マキなどの数種類の樹木からなる雑木林となっています。

駐車場の裏手には孟宗竹・黒竹・大王竹といった3種類の竹からなる竹林があります。

また「釜台の森」の中には神奈川県津久井郡(現相模原市)から移築された250年以上前に造られた茅葺きの古民家と昭和37年に建てられたモダン和風の瓦葺きの住宅建築があります。

2023年12月に完成予定の「ヒルトップフォレスト釜台」は森の北端部に建設されます。

「釜台の森」の歴史

「釜台の森」は横浜で活躍した昭和の実業家、故鈴木花三郎氏※1が昭和35~37年にかけて釜台町に新設した屋敷があった場所です。 

当時の敷地周辺は現在のような住宅が開発される前で、敷地のいたるところから富士山が望めたそうです。

花三郎氏は当時「滅びゆく日本の文化財」の一つであった古民家に対して私財を投じ、復元移築するために文化財建造物保存の大家であった故大岡實博士(横浜国大建築学科教授)の技術指導の下、学術的復原を施しながら昭和37年に神奈川県津久井からこの地に古民家を移築しました。

花三郎氏は古民家を自分一人で独占せずに文化的な催しや見学希望者に対して公開することを望んでおられました。

昭和37年当時、個人の古民家移築の多くは観光料亭や別荘目的であり、学術価値を考慮し一般開放も視野に入れた移築は極めて先進的であり、「個人民家園」として貴重な存在だったといえます。

※1:鈴木花三郎(1899~1979)
愛媛県出身。叔父の鈴木達治(横浜高等工業学校《現横浜国大》初代校長)に呼ばれ横浜に来る。
横浜商業学校卒業、東京高等商業学校(現一橋大学)中退。
(株)横浜貿易倉庫社長、神奈川県倉庫協会会長、日本倉庫協会副会長などを歴任。 

茅葺の古民家

茅葺きの古民家は18世紀中頃の神奈川県津久井郡(現相模原市)山間部における中層農家で、故大岡實博士の監修により当初形式に昭和35年の移築時に復原されていますが、経年劣化により建物の傷みが進行しています。

2002年には横浜国大都市科学部の大野敏研究室による建物実測調査が行われています。

2018~19年には横浜国大建築学科の学生や茅葺ボランティアの方々などの協力により屋根の補修や清掃などが実施されています。

茅葺きの作業風景

茅葺き古民家の保存に関する現在までの活動状況

一般社団法人鎌倉総合研究所※2は2017年以降、は古民家保存のために、創造的で多世代の人たち同士の出会いの場「クリエイティブコミュニティ」が生まれることを願うと同時に、故鈴木花三郎氏への敬意を表し、古民家を「花三郎の家」と命名し様々な活動を展開してきました。

古民家の歴史的空間の中でアートや文化、学びに関する活動を展開するためにミュージカルや詩の朗読会、演奏会などのアートイベント、雑草博士との町歩き、(株)横浜ビール協賛による古民家ビアガーデン、修繕費用を集めるためのクラウドファンディングなどを実施してきました。

今後も様々な人たちと連携しながら保存再生活用を目指して活動し続けていく予定です。

※2:一般社団法人 鎌倉総合研究所
土地・建物を「資産」ではなく、持ち主や利用者、社会に多様な価値をもたらす「資源化」することを研究・実践する団体です。
構成メンバーは建築・不動産関連だけでなく相続や造園、金融、アート、デジタル、映像、まちづくりなど多様な領域の専門家によって構成されています。

「花三郎の家」のロゴマーク

過去に開催されたイベントのフライヤー

活動の様子

瓦葺きの古民家

瓦葺きの古民家は横浜国大建築学科第一期卒業生で水煙会(同窓会)会長も務めた建築家 吉原慎一郎※3の設計です。

奈良や大阪などで見られる伝統的な日本の切妻民家造である大和棟のような洗練された切妻屋根と白い漆喰壁の対称性が美しい和風建築です。

貴重な建築資材などが使われ文化財的な価値が高い昭和の建築であるため、様々な人たちと連携しながら保存再生活用を目指して活動し続けていく予定です。

※3:吉原慎一郎(1908-2009)
創和建築設計事務所創業者。 主な設計作品は神奈川県立川崎図書館、野毛都橋商店街ビル、横浜スタジアム等がある。

ヒルトップフォレスト釜台

釜台の森の北端部に新たに建設される「ヒルトップフォレスト釜台」 は6戸のメゾネット住戸からなるテラスハウスです。

〇 店舗スペース

各住戸には6畳程度の大きさの店舗スペースがあります。

小さなスペースですが本屋、ギャラリー、ヘアサロン、カフェなどの小商いを行うことが可能です。

(注)飲食店を行う場合は別途、保健所との事前相談が必要になります。

〇 専有庭

各住戸には33~66㎡程度の専有庭が設けられています。

専有庭があるエリアは元々、畑として使われていました。その時の肥沃な黒土を再利用して専有庭に仕込まれていますので、野菜や草花を栽培できる菜園として利用できます。

〇 緑の小径

各住戸へのアクセスは多種多様な中高木や地被植物によって彩られた「緑の小径」となっていますので、四季の変化を日々感じられるアプローチ空間としています。

〇緑風を取り入れる建築

建物の南側には「釜台の森」、北側には「緑の小径」といったように住戸は南北の木々挟まれる形になります。

日向と日陰では温度差があり、専有庭側(日向側)は暖められ上昇気流が生まれ、緑の小径側(日陰側)は下降気流が生まれます。

北側の樹木と建物との間にたまる冷気を建物の中に取り入れ、南側の窓で室内の熱を排気できるように、緑が建物にとって自然の空調装置になる配置計画としています。